自治体における会計年度任用職員についてまとめています。
このページでは、会計年度任用職員を希望する前に知っておきたい知識や副業、パートタイム・フルタイムとの違い、ボーナス(期末手当)について詳しく説明していきます。
会計年度任用職員とは?分かりやすく解説
会計年度任用職員とは、自治体の繁忙期や職員に欠員が生じた際等に、正規職員の補助として一会計年度内を任期として任用される非常勤の公務員を指します。
以前は、臨時職員や非常勤職員と呼ばれておりましたが、地方公務員法・地方自治法の改正により2020年4月1日から全国の市町村で会計年度任用職員となり、非常勤職員の制度を会計年度任用職員制度といいます。
会計年度任用職員の身分
会計年度任用職員の身分は、地方公務員法が適用される一般職の地方公務員となります。
- 参照:「総務省 地方公務員の臨時・非常勤制度について」「常陸太田市」
また自治体によっては「地方公務員法第22条の2第1項に規定する一般職の非常勤職員」という明記がされている場合もあります。
地方公務員法第22条の2地方公務員法第22条の2
地方公務員法第22条の2(会計年度任用職員の採用の方法等)
- 次に掲げる職員(以下この条において「会計年度任用職員」という。)の採用は、第十七条の二第一項及び第二項の規定にかかわらず、競争試験又は選考によるものとする。
一 一会計年度を超えない範囲内で置かれる非常勤の職(第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を除く。)(次号において「会計年度任用の職」という。)を占める職員であって、その一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間であるもの
二 会計年度任用の職を占める職員であって、その一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間と同一の時間であるもの- 会計年度任用職員の任期は、その採用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内で任命権者が定める。
- 任命権者は、前二項の規定により会計年度任用職員を採用する場合には、当該会計年度任用職員にその任期を明示しなければならない。
- 任命権者は、会計年度任用職員の任期が第二項に規定する期間に満たない場合には、当該会計年度任用職員の勤務実績を考慮した上で、当該期間の範囲内において、その任期を更新することができる。
- 第三項の規定は、前項の規定により任期を更新する場合について準用する。
- 任命権者は、会計年度任用職員の採用又は任期の更新に当たっては、職務の遂行に必要かつ十分な任期を定めるものとし、必要以上に短い任期を定めることにより、採用又は任期の更新を反復して行うことのないよう配慮しなければならない。
- 会計年度任用職員に対する前条の規定の適用については、同条中「六月」とあるのは、「一月」とする。
出典:地方公務員法
会計年度任用職員の服務規律について
会計年度任用職員は、地方公務員法の適用を受けるため、以下の服務規律(業務遂行にあたり遵守すべき義務)が適用されます。
- 服務の宣誓
- 法令等及び上司の職務上の命令に従う義務
- 信用失墜行為の禁止
- 守秘義務
- 職務に専念する義務
- 政治的行為の制限
- 争議行為等の禁止
- 営利企業への従事等の制限
(パートタイムは制限なし)
特に会計年度任用職員のフルタイムで採用される場合は注意しましょう。
会計年度任用職員の副業はOK?
上記で説明した、会計年度任用職員は「営利企業への従事等の制限(地方公務員法第38条)」が服務規程にあります。そのため、副業(営利企業への従事等)を行う場合、正規職員の地方公務員と同様に任命権者の許可が必要となります。
しかし、「パートタイム会計年度任用職員」の場合は、営利企業への従事等の制限はありませんので、副業が可能と言えます。
注意点としては、「パートタイム会計年度任用職員」であった場合でも、他の服務規程が適用されることから、自治体によっては「営利企業従事等に関する届出書」の提出を求められる場合もあります。
※公務員の副業が解禁されるとの話題があり、動いている自治体もありますが、一般的には副業を行うことはできません。
地方公務員法第38条地方公務員法第38条
- 地方公務員法第38条(営利企業への従事等の制限)
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。- 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。
職員の営利企業への従事等の制限範囲
地方公務員法第38条により、以下の職員は営利企業への従事等の制限がされます。
- 常勤の一般職員
- 任期付職員(短時間勤務を含む)
- 再任用職員(短時間勤務を含む)
- 臨時的任用職員(地方公務員法第第22条の3)
- フルタイム会計年度任用職員(地方公務員法第第22条の2第1項第2号)
以上、注意が必要となります。
会計年度任用職員はいつから?
会計年度任用職員制度は、地方公務員法・地方自治法の改正により、2020年(令和2年)4月1日から全国すべての市町村で施行された制度です。
2023年時点で臨時的任用職員や嘱託員採用、非常勤職員採用などの言葉は自治体で聞かなくなりました。
非常勤職員等と比較して何が変わったのか?
非常勤職員や臨時職員など、採用の方法等についても法文上不明確で、適正な選考をしない採用や条例で定めていない賃金のあり方など、地方自治体それぞれで異なる解釈がされおり、新しく 「会計年度任用職員制度」 が整備されました。
そのため、賃金や期末手当の支給、任用期間、採用方法、地方公務員法の適用などが大きな変更点と言えるでしょう。
知っておきたい会計年度任用職員の知識
以下からは、会計年度任用職員を希望する方に向け、知っておきたい知識をさらにご紹介していきます。
会計年度任用職員のフルタイムとパートタイムの違い
会計年度任用職員には、フルタイムとパートタイムの2つの種類が存在し、違いは以下の通りです。
フルタイム | パートタイム | |
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給与 | 当月払い、月額(要資格職)、時間額(時給) | 翌月払い、時間額(時給) |
勤務時間 | 正職員よりも短い又は、同等の勤務時間 (例:週38時間45分を超えない範囲等) |
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手当 | 期末手当(※1)、通勤手当、その他各種手当(※2) | |
年次休暇 | 年間の勤務日数が48日以上の場合に付与 | |
各種保険 |
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服務規律 |
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- ※1:期末手当は、週の勤務時間が15時間30分以上(任用条件による)かつ、任期の定めが6月以上の条件となります。
- ※2:自治体によって異なりますが、職種ごとに必要な手当を従来通り支給されます。
- ※3:パートタイムの場合は副業・ダブルワークが可能となります。
フルタイムとパートタイムでは、各種保険や服務規律などに違いがあるため注意しておきましょう。
採用試験は競争試験、又は選考
会計年度任用職員の採用試験は、競争試験、又は選考となります。
競争試験 | 不特定多数の受験者を対象に成績主義の原則に基づき、試験の合計点(試験成績の高低の比較)により合格者の選抜を行う試験 |
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選考(試験) | 特定の候補者を対象に適性・能力・実績・意欲など、職にふさわしい能力(職務遂行能力)があるか否かを実証する方法 |
競争試験・選考についてさらに詳しくは「公務員における競争試験と選考の違いとは?」を確認しておきましょう。
採用試験の内容について
会計年度任用職員の採用試験の内容は自治体や希望する職種によって異なります。
一般的に多い採用試験としては以下が当てはまります。
1次試験 |
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2次試験 |
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地方公務員試験と比較すると、会計年度任用職員の採用試験は簡単なものとなっており、一般企業に契約社員で入社するイメージで良いでしょう。
ただし、条件や資格等応募に必要な項目が多い場合があり、募集要項等を必ず確認しておきましょう。
条件付き採用が行われる場合がある
会計年度任用職員の条件付き採用とは、採用後1ヶ月間を仮採用とし、業務を良好な成績で遂行するかを確認する期間となります。
条件付き採用の期間を経て、正式採用となります。
自治体によって異なりますが、「1ヶ月間又は、1ヶ月間の勤務日数が15日に満たない場合は15日間等」の条件付き採用の期間を設けている場合がほとんどです。(1ヶ月以上となる場合がありません。)
会計年度任用職員の任期は?(任用期間)
会計年度任用職員は、その名の由来の通り、任期(任用期間)は、会計年度(4月1日から翌年の3月末)であることが多く、原則1年度以内となります。
地方公務員法(第2条の2-2項)では「採用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間」と定められており、自治体等が会計年度任用職員を採用する場合には、任期を明示しなければなりません。
地方公務員法 第2条の2-2項地方公務員法 第2条の2-2項
地方公務員法(第2条の2-2項)
会計年度任用職員の任期は、その採用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内で任命権者が定める。
引用:地方公務員法
会計年度任用職員は任期の更新(再度任用)はされる?
会計年度任用職員では、自治体によって会計年度(任期)が終了した場合でも、以下例のように、任期の更新(再度任用)される場合があります。
- 例:勤務成績が良好な場合等、再度任用する場合があります。(最大4回)
ただし、自治体によって様々であり、会計年度任用職員の募集要項に記載されている場合もあるため確認しましょう。
会計年度任用職員のボーナス(期末手当)について
以下では会計年度任用職員のボーナス(期末手当)について詳しく解説していきます。
勤勉手当は支給されないため注意
会計年度任用職員の場合、一般的にボーナスと呼ばれる期末手当は支給されるようになりましたが、正規雇用の地方公務員に支給される勤勉手当は支給されないため注意しましょう。
期末手当 | 生計費が一時的に増大する時期に、生計費を補充するための生活補給金としての性格を有する手当 |
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勤勉手当 | 勤務成績に応じて支給される能力給の性格を有する手当 |
パートタイム会計年度任用職員でも、条件を満たすことでボーナス(期末手当)が支給される自治体もありますが、一般的には支給されないため、注意しましょう。
ただし、早ければ2022年4月よりパートタイム会計年度任用職員もボーナスが支給される予定です。
ボーナス(期末手当)の支給条件
ボーナス(期末手当)の支給条件は以下の2つの条件に当てはまる会計年度任用職員に支給されます。
- 週の勤務時間が15時間30分以上(任用条件による)
- 任期の定めが6月以上
また、基準日である6月1日、12月1日に在籍している職員が支給対象になります。
採用する自治体によって「任用条件」が定められている場合もあるため、募集要項は確認しておきましょう。
ボーナス(期末手当)の支給割合
会計年度任用職員のボーナス(期末手当)の支給割合は、2022年12月現在で年間2.4ヶ月分(6月1.2ヶ月分、12月1.2ヶ月分)となります。
「月の給料+地域手当」に支給割合を掛けてボーナス(期末手当)が支払われます。
また、在職期間(例:4月入職、6月支給の場合など)により支給額が減少する場合があるので注意しましょう。
参照:茂原市
まとめ
会計年度任用職員は、2020年4月1日から全国の自治体で始まった比較的新しい制度です。
会計年度任用職員を希望する場合、期末手当が支給されることや、地方公務員法が適用されることなど、詳しい内容を改めて確認するとともに、自治体の募集要項はチェックしておきましょう。
また、会計年度任用職員の他に、任期が決まっている「任期付職員(最長5年)」も存在し、同じく地方公務員となるため、「地方公務員の任期付職員とは?」を合わせて確認しておきましょう。