政府が、全国約1800の地方自治体が使用するITシステムを共通化する方針を固め、具体的に自治体システムの共有化の対象となるシステムは多岐にわたり、以下のような業務が含まれます。

  • 給付金支給
  • 学校事務
  • 住民基本台帳の管理
  • 税務業務
  • 保健福祉業務 等

これらのシステムは、政府クラウドの基盤上(ガバメントクラウド)に構築される予定であり、全国の自治体が利用できるように共通化していくこととなります。

この計画の背景には、人口減少と自治体の職員不足が深刻化する中で、自治体のITシステムの維持が困難になる恐れがあることが挙げられます。

特に、学校の事務など、各自治体に共通する業務のシステムを統一することで、行政事務の効率化を図ることを目的としています。

政府はこの地方自治体が使用するITシステムを共通化する方針を、2024年6月に策定する「国・地方デジタル共通基盤に関する基本方針」に盛り込む予定であることが、読売新聞の調べで分かりました。(読売新聞オンライン

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ココがポイント
自治体システム標準化の対象業務は20業務
自治体システム標準化はコスト削減・セキュリティ対策・データ連携を可能にする
自治体が2025年度末までの導入は難しく政府と協議を行い進める方針

自治体のITシステム共通化の背景

全国の地方自治体は独自のITシステムを使用しており、その維持管理が大きな負担となっています。

特に、小規模な自治体では、人口減少や職員不足が進行しており、システムの維持や更新が困難になっています。全国的に、1994年には330万人いた自治体の職員が、2023年には280万人に減少しており、この傾向はさらに続くと予測されています。さらに、情報システムの担当者が1人以下の自治体は300にも上ります。

このような状況は、システムの維持や住民サービス提供に支障をきたす恐れがあり、住民サービスの品質低下やセキュリティリスクの増加が懸念されています。

政府は、これらの課題を解決するために、全国約1800の地方自治体が使用するITシステムの共通化を進める方針を発表しています。共通のシステムを導入することで、個々の自治体が独自にシステムを開発・運用するコストを削減するとともに、セキュリティ対策の一元化や、自治体間でのデータ連携を容易にすることで、住民へのサービス提供の迅速かつ的確化を推進します。

自治体システム標準化の対象業務一覧

地⽅公共団体情報システムの標準化に関する法律(e-Gov)に定められているシステム標準化の対象20業務は以下の通りです。

①児童手当 ・児童手当又は特例給付の支給に関する事務
②子ども・子育て支援 ・子どものための教育・保育給付若しくは子育てのための施設等利用給付の支給、特定教育・保育施設、特定地域型保育事業者若しくは特定子ども・子育て支援施設等の確認又は地域子ども・子育て支援事業の実施に関する事務
③住民基本台帳 ・住民基本台帳に関する事務
・中長期在留者の住居地の届出又は外国人住民に係る住民票の記載等についての通知に関する事務
・特別永住者の住居地の届出に関する事務
・個人番号の指定に関する事務
・住居表示に係る事項の通知に関する事務
④印鑑登録 ・印鑑に関する証明書の交付に関する事務
⑤就学 ・就学義務の猶予若しくは免除又は就学困難と認められる学齢児童若しくは学齢生徒の保護者に対する必要な援助に関する事務
・学齢簿に関する事務
・就学時の健康診断に関する事務
⑥選挙人名簿管理 ・選挙人名簿又は在外選挙人名簿に関する事務
・投票人名簿又は在外投票人名簿に関する事務
⑦地方税 ・個人の道府県民税(都民税を含む。)若しくは市町村民税(特別区民税を含む。)、法人の市町村民税、固定資産税、軽自動車税、都市計画税又は森林環境税の賦課徴収に関する事務
⑧地方税 ・個人の道府県民税(都民税を含む。)若しくは市町村民税(特別区民税を含む。)、法人の市町村民税、固定資産税、軽自動車税、都市計画税又は森林環境税の賦課徴収に関する事務
⑨地方税 ・個人の道府県民税(都民税を含む。)若しくは市町村民税(特別区民税を含む。)、法人の市町村民税、固定資産税、軽自動車税、都市計画税又は森林環境税の賦課徴収に関する事務
⑩地方税 ・個人の道府県民税(都民税を含む。)若しくは市町村民税(特別区民税を含む。)、法人の市町村民税、固定資産税、軽自動車税、都市計画税又は森林環境税の賦課徴収に関する事務
⑪戸籍 ・戸籍に関する事務
⑫健康管理 ・健康教育、健康相談その他の国民の健康の増進を図るための措置に関する事務
・母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置に関する事務
・予防接種の実施に関する事務
⑬生活保護 ・生活保護の決定及び実施又は就労自立給付金若しくは進学準備給付金の支給に関する事務
⑭児童扶養手当 ・児童扶養手当の支給に関する事務
⑮障害者福祉 ・障害児通所給付費、特例障害児通所給付費、高額障害児通所給付費、肢体不自由児通所医療費、障害児相談支援給付費又は特例障害児相談支援給付費の支給に関する事務
・特別児童扶養手当、障害児福祉手当又は特別障害者手当の支給に関する事務
・福祉手当の支給に関する事務
・自立支援給付の支給に関する事務
⑯介護保険 ・介護保険に関する事務
⑰国民健康保険 ・被保険者の資格の取得若しくは喪失、保険給付の実施又は保険料の賦課及び徴収に関する事務
⑱後期高齢者医療 ・被保険者の資格の取得若しくは喪失又は保険料の徴収に関する事務
⑲国民年金 ・被保険者の資格の取得若しくは喪失、年金である給付若しくは一時金の支給、付加保険料の納付又は保険料の免除に関する事務
⑳国民年金 ・被保険者の資格の取得若しくは喪失、年金である給付若しくは一時金の支給、付加保険料の納付又は保険料の免除に関する事務

※その他①〜⑳までの事務に附帯する事務
※出典:総務省 自治体情報システムの標準化・共通化について

自治体の問題点

公式発表によると、自治体情報システムの標準化は国民健康保険関連業務や障害者福祉関連業務など、多岐にわたる業務が対象となっており、2025年度末までに導入を完了すること(自治体の移行を完了する目標)が義務付けられています​。 (デジタル庁)​​

自治体の問題点として、導入や移行の期間が短すぎることや、情報システムの担当者の人材不足などが挙げられます。

そのため、政府は自治体と密接に協議しながら、柔軟な移行スケジュールを設定し、段階的に共通化を進める方針です。

現在の自治体システム標準化スケジュール

現在の自治体システム標準化スケジュール

出典:総務省 自治体情報システムの標準化・共通化(地方自治体の基幹業務システムの統一・標準化に向けたスケジュール)

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ABOUTこの記事をかいた人

キャリアコンサルタント(国家資格) 真下 彩花

新卒で東証スタンダードに上場している会社に入社し、個人事業主・税理士などの経理・税務サポートを担当後、半導体・電子部品等の最大手(東証プライム上場)に転職し、営業支援に従事する。その後、ベンチャー企業での経理・採用経験を経て、2019年から株式会社pekoにて、公務員試験・求人情報「公務in」の運営、キャリアアドバイザーとして多くの転職者のサポートを担当中。

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