人事院は2024年8月13日、国家公務員一般職(大卒程度)の2024年度採用試験について、「技術系」の合格者数が採用予定数を下回り、定員割れである状況を発表しました。
具体的には、技術系の合格者が「1542人」の定員に対し「1482人」にとどまり、定員割れとなりました。(※技術系の区分は、デジタル・電気・電子、機械、土木、建築、物理、化学、農学、農業農村工学、林学の計9職種になります。)
以下は、「2024年度国家公務員一般職(大卒程度)試験 技術系の合格者の状況」です。
試験の区分 | 申込者 | 受験者 | 最終合格者 | 倍率 | 採用予定数 | 定員割れ |
---|---|---|---|---|---|---|
デジタル・電気・電子 | 455人 (69人) |
258人 (38人) |
164人 (25人) |
2.8倍 (1.6倍) |
244人 | ▲80人 |
機械 | 199人 (22人) |
132人 (10人) |
83人 (8人) |
2.4倍 (1.6倍) |
143人 | ▲60人 |
土木 | 819人 (155人) |
543人 (108人) |
312人 (65人) |
2.6倍 (1.7倍) |
423人 | ▲111人 |
建築 | 136人 (50人) |
82人 (28人) |
52人 (19人) |
2.6倍 (1.6倍) |
73人 | ▲21人 |
物理 | 285人 (57人) |
190人 (42人) |
155人 (36人) |
1.8倍 (1.2倍) |
120人 | 35人 |
化学 | 443人 (175人) |
270人 (107人) |
172人 (68人) |
2.6倍 (1.6倍) |
187人 | ▲15人 |
農学 | 661人 (295人) |
460人 (209人) |
285人 (129人) |
2.3倍 (1.6倍) |
168人 | 117人 |
農業農村工学 | 149人 (42人) |
111人 (31人) |
57人 (18人) |
2.6倍 (1.9倍) |
36人 | 21人 |
林学 | 373人 (125人) |
294人 (99人) |
202人 (73人) |
1.8倍 (1.5倍) |
148人 | 54人 |
技術系計 | 3,520人 (990人) |
2,340人 (672人) |
1,482人 (441人) |
2.4倍 (1.6倍) |
1,542人 | ▲60人 |
※()は女性の人数及び倍率
※出典:人事院:2024年度国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)及び専門職試験(大卒程度試験)の合格者発表
また、技術系の最終合格者数は2023年度は1,793名となっており、前年と比較すると2024年度は311人少ない計算になります。
人事院は「技術職は、民間企業との人材確保競争が影響した。柔軟な働き方の実現や待遇の改善など、民間企業に匹敵する勤務環境を実現し、国家公務員の人材確保に努めていきたい」としています。
※技術職が初の定員割れと一度伝えられたが、8月16日の人事院の発表では、4年前の2020年度試験でも合格者数が採用予定数を下回っており、2回目だったことを訂正しています。
また、2020年はコロナ渦で採用試験日程が約2ヶ月遅れたことや、地方公務員への流出が影響とされています。
編集部からのコメント
今回の国家公務員一般職(大卒程度)試験における技術職の定員割れは、国家公務員制度の将来に影響を与える重要な兆候です。
特に「デジタル・電気・電子」「機械」「土木」「建築」などの技術職は、インフラの整備や社会の持続可能性を支える重要な役割を果たしているため、その人材不足は公共サービスの質に直結します。
定員割れの原因としては、まず民間企業との競争が大きな要因とされています。技術系の人材は、特にデジタル分野や機械工学などで高い需要があり、企業は柔軟な働き方や報酬面で優れた条件を提示しています。
国家公務員の仕事は社会貢献性が高い一方で、民間企業のような柔軟性や報酬面での競争力が不足していることが課題です。
さらに、地方自治体でも技術職の採用に苦戦しているケースが増えており、国家公務員の技術職の定員割れは地方公務員採用にも影響を及ぼす可能性が高いでしょう。