公務員の扶養手当とは、扶養親族がいる職員に対して支給される、生活支援を目的とした手当の一つです。
この手当の要件を満たすことで、国家公務員や地方公務員は毎月扶養手当を受給することができます。
国家公務員の扶養手当に関する詳細は、「一般職の職員の給与に関する法律(e-GOV)」に記載されています。この法律は、国家公務員法第2条に定義される一般職に属する国家公務員の給与に関する事項を規定する目的で制定されました。
そのため、国家公務員における扶養手当の具体的な金額については、以下の通りです。
配偶者 | 月額6,500円 ※行政職俸給表(一)8級職員等の場合、月額3,500円 |
---|---|
子 | 月額10,000円 |
※年齢加算:16歳年度始めから22歳年度末 月額5,000円加算 |
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父母等 | 月額6,500円 ※行政職俸給表(一)8級職員等の場合、月額3,500円 |
その他 (孫・弟妹等) |
月額6,500円 ※行政職俸給表(一)8級職員等の場合、月額3,500円 |
扶養手当の要件を満たすことにより、対象となる国家公務員の職員は毎月手当を受給できます。
一方、地方公務員の場合、扶養手当の詳細は各自治体の条例や規定に基づいて定められます。
しかし、多くの場合、地方公務員も国家公務員の扶養手当と同様の要件および支給額が適用されます。
以下で、国家公務員の扶養手当の概要と、その対象となる配偶者(妻・夫)、子(子供)、親(父母、祖父母)等の要件について、分かりやすく詳細に説明していきます。
国家公務員の扶養手当について
国家公務員の扶養手当は、扶養親族がいる職員に生活支援を目的として提供される手当です。
以下では、国家公務員が扶養手当を受給するための所得制限と、条件を満たす職員について詳しく説明します。
扶養手当の所得制限
国家公務員の扶養手当を受給するための扶養者の所得制限については、具体的な金額が公式に記述されているわけではありません。
しかし、「一般職の職員の給与に関する法律(e-GOV)」によると、「扶養手当の支給については、他に生計の途がなく主としてその職員の扶養を受けているものを扶養親族とする」と明記されています。
この基準により、扶養手当を受給するためには以下の2条件を満たす必要があります。
- 他の人に扶養されていないこと
- 国家公務員である職員に扶養されていること
従って、国家公務員の職員に扶養されるためには、年間所得が130万円未満である必要があると解釈されます。
したがって、所得制限に関しては「年間所得130万円未満」という基準が適用されると言えます。
エビデンス一般職の職員の給与に関する法律・(扶養手当)第11条2項
扶養手当の支給については、次に掲げる者で他に生計の途がなく主としてその職員の扶養を受けているものを扶養親族とする。
出典:一般職の職員の給与に関する法律 e-GOV
扶養手当を受給できる職員の条件
国家公務員の扶養手当は、以下の全ての条件に該当する職員に対して支給されます。
- 国家公務員であること
- 定められた扶養親族がいること(配偶者、子、父母など)
- 行政職俸給表(一)の適用を受け、職務の級が9級未満である職員、または、該当する各俸給表の適用を受け、職務の級が9級未満である職員であること
この条件を満たす職員に限り、扶養手当が支給されます。
したがって、すべての国家公務員が扶養手当を受給できるわけではありません。
エビデンス一般職の職員の給与に関する法律・(扶養手当)第11条1項
扶養手当は、扶養親族のある職員に対して支給する。ただし、次項第一号及び第三号から第六号までのいずれかに該当する扶養親族(以下「扶養親族たる配偶者、父母等」という。)に係る扶養手当は、行政職俸給表(一)の適用を受ける職員でその職務の級が九級以上であるもの及び同表以外の各俸給表の適用を受ける職員でその職務の級がこれに相当するものとして人事院規則で定める職員(以下「行(一)九級以上職員等」という。)に対しては、支給しない。
出典:一般職の職員の給与に関する法律 e-GOV
国家公務員の扶養手当の配偶者(妻・夫)
国家公務員の扶養手当について、配偶者(妻・夫)の要件や金額等を以下で詳しく説明します。
なお、配偶者の扶養手当は「配偶者手当」とも呼ばれますが、正式名称は「扶養手当」です。
扶養手当に関する配偶者(妻・夫)の要件(配偶者手当)
国家公務員の扶養手当を受給するための配偶者(妻・夫)に関する要件は、以下の通りです。
- 生計を一にしていること(日常の生活の資を共にすること)
- 生計を立てられる収入がないこと(年間所得が130万円未満の収入)
- 法的に婚姻を届け出ている配偶者、または届出はないものの、事実上の婚姻関係にあると認められる者(内縁の関係)
- 他の人に扶養されていないこと
以上の条件を満たす場合、婚姻届けがない事実婚の状態でも、配偶者としての扶養手当の受給が可能です。
エビデンス一般職の職員の給与に関する法律・(扶養手当)第11条2項1号
1.配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)
出典:一般職の職員の給与に関する法律 e-GOV
配偶者(妻・夫)と別居している場合の扶養手当受給条件
単身赴任などの一時的な理由を除き、配偶者(妻・夫)と別居している場合でも、以下の条件を満たすことで扶養手当の受給が可能です。
- 別居中の扶養親族の総収入の推計額の3分の1以上が職員からの仕送りによって賄われていること
- 職員から別居中の扶養親族への仕送りが、金融機関を通じた月1回以上の継続的な振込みであること。※仕送り金を入手することが特別な事情により困難である場合はこの限りではありません。
ただし、別居中の扶養親族が複数いる場合、その総収入推計額は合算されます。
また、国家公務員が別居中の配偶者(妻・夫)に対する扶養手当を受給する場合、別居の扶養親族として認定されるための手続きが必要です。
この手続きでは、振込者、振込先、および振込額を客観的に証明できる資料の提出が求められます。
エビデンス扶養手当に係る認定等の取扱いに関する要綱・第6条
第6条 別居の扶養親族の認定
1.職員と同一の世帯に属さない者を扶養親族とする場合は、次に掲げる要件の全てを満たさなければならない。ただし、就学(学校教育法(昭和22年法律第26号)に定める学校への就学に限る。)、単身赴任等一時的な事情による別居と認められる場合は、この限りでない。
(1) 職員と世帯を異にする扶養親族(以下この条において「別居の扶養親族」という。)の総収入推計額の3分の1以上の額が、職員からの仕送りによるものであること。
(2) 職員から別居の扶養親族に対する仕送りの方法が、金融機関への月1回以上の継続的な振込みによるものであること。ただし、別居の扶養親族の入院、介護施設への入所その他金融機関への振込み以外の方法によらなければ仕送り金の入手が困難であると認められる特別な事情がある場合は、この限りでない。
(3) 別居の扶養親族が扶養能力を有する他の扶養義務者と同居していないこと。
2.別居の扶養親族に配偶者がある場合は、当該配偶者の総収入推計額を前項第1号に規定する別居の扶養親族の総収入推計額に合算するものとする。
出典:扶養手当に係る認定等の取扱いに関する要綱
同性の場合の扶養手当について
同性のパートナーがいる国家公務員は、現在扶養手当を受け取ることができません。
人事院は「実婚関係に同性カップルを含める解釈はできない」としています。
しかし、2023年9月に朝日新聞が全国47都道府県に対して行った調査では、11の都県(自治体)が同性のパートナーでも「支給できる」と回答しています。
自治体では、「事実婚と同様の事情にある者」を扶養手当の対象とする方針から、同性カップルにも扶養手当を支給する動きが見られます。
共働きの配偶者(妻・夫)が育児休業している場合
共働きの配偶者(妻・夫)が育児休業中の期間で、かつ年間所得が130万円未満である場合、手続きを行うことで扶養手当を受け取ることが可能です。
人事院の両立支援ハンドブックには以下のように記載されています。
配偶者が育児休業をしている場合で、育児休業開始から1年間の配偶者の所得(育児休業手当金等を含む)の見込額が130万円を下回り、主たる扶養者が職員本人であるときは、届出により扶養手当を受け取ることもできます。
出典:両立支援ハンドブック(人事院)
配偶者(妻・夫)の扶養手当の受給金額
国家公務員の配偶者(妻・夫)へ支給される扶養手当は、月額6,500円または3,500円です。
配偶者の扶養手当 | 金額 |
---|---|
行政職俸給表(一)7級以下の職員 | 月額6,500円 |
行政職俸給表(一)8級職員等 | 月額3,500円 |
※この規定は他の各俸給表にも適用されます。
配偶者(妻・夫)に対する扶養手当月額6,500円の扶養手当を年間で計算すると、配偶者(妻・夫)の扶養手当のみで78,000円になります。
国家公務員の扶養手当の子(子供)
国家公務員の扶養手当について、子供(扶養親族としての子)の要件や金額等について、以下で詳しく説明します。
扶養手当における子(子供)の要件
国家公務員の扶養手当を受けるための「子(子供)」に該当する要件は、以下の通りです。
- 生計を一にしていること(日常の生活の資を共にすること)
- 生計を立てられる収入がないこと(年間所得が130万円未満の収入)
- 他の人の扶養者ではないこと
- 22歳以下の子供
(※満22歳の誕生日の前日以後の最初の3月31日までの間にある子)
補足解説
この表現によれば、22歳の誕生日の前日(4月1日)以降の最初の3月31日までの期間は、翌年の3月31日までを指します。
これにより、子供が22歳の誕生日を迎える翌日(4月2日)から翌年の3月31日まで、「満22歳の誕生日の前日以降の最初の3月31日までの間にある子供」と見なされます。
一般職の職員の給与に関する法律・(扶養手当)第11条2項
2.扶養手当の支給については、次に掲げる者で他に生計の途がなく主としてその職員の扶養を受けているものを扶養親族とする。
(1)配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)
(2)満二十二歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある子
(3)満二十二歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある孫
(4)満六十歳以上の父母及び祖父母
(5)満二十二歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある弟妹
(6)重度心身障害者
出典:一般職の職員の給与に関する法律 e-GOV
扶養手当における子(子供)の受給金額
扶養手当における子(子供)の受給金額は以下の通りです。
扶養親族としての子 | 月額10,000円 |
---|---|
年齢加算 (16歳年度始めから22歳年度末) |
月額5,000円 |
例えば、該当する子供が1人の場合、年間で12万円を受給できます。16歳以上の子供が1人の場合は、年間で18万円の扶養手当を受け取ることができます。
子供が大学生でも扶養手当は受給できる?
大学に通っている、18歳から22歳である子供であれば、国家公務員の職員が父母である場合、大学生も扶養手当を受け取ることができます。
※また、要件は年齢のみのため、専門学校でも短期大学に通っている子供でも受給できます。
さらに、別の地域で一人暮らしをしている大学生等の子供でも、扶養手当の受給は可能です。ただし、この別居は、学校教育法(昭和22年法律第26号)(e-GOV)で定められた学校への就学が理由である場合に限ります。
補足:学校への就学以外で別居している場合
学校への就学以外の理由で、子供と別居している場合、扶養手当を受給するには次の条件を満たす必要があります。
- 別居中の扶養親族の総収入の推計額の3分の1以上が職員からの仕送りによって賄われていること
- 職員から別居中の扶養親族への仕送りが、金融機関を通じた月1回以上の継続的な振込みであること
これらの点に注意が必要であり、別居中の子供に対する扶養手当を受給する場合、別居の扶養親族として認定されるための手続きが必要です。
エビデンス扶養手当に係る認定等の取扱いに関する要綱・第6条
第6条 別居の扶養親族の認定
1.職員と同一の世帯に属さない者を扶養親族とする場合は、次に掲げる要件の全てを満たさなければならない。ただし、就学(学校教育法(昭和22年法律第26号)に定める学校への就学に限る。)、単身赴任等一時的な事情による別居と認められる場合は、この限りでない。
(1) 職員と世帯を異にする扶養親族(以下この条において「別居の扶養親族」という。)の総収入推計額の3分の1以上の額が、職員からの仕送りによるものであること。
(2) 職員から別居の扶養親族に対する仕送りの方法が、金融機関への月1回以上の継続的な振込みによるものであること。ただし、別居の扶養親族の入院、介護施設への入所その他金融機関への振込み以外の方法によらなければ仕送り金の入手が困難であると認められる特別な事情がある場合は、この限りでない。
(3) 別居の扶養親族が扶養能力を有する他の扶養義務者と同居していないこと。
2.別居の扶養親族に配偶者がある場合は、当該配偶者の総収入推計額を前項第1号に規定する別居の扶養親族の総収入推計額に合算するものとする。
出典:扶養手当に係る認定等の取扱いに関する要綱
国家公務員の扶養手当における親(父母・祖父母)
以下では、国家公務員の扶養手当における親(父母・祖父母)について、要件や金額等、詳しく説明していきます。
扶養手当の親(父母・祖父母)の要件
国家公務員の扶養手当に関する親(父母・祖父母)の要件は以下の通りです。
- 生計を一にしていること(日常の生活の資を共にすること)
- 生計を立てられる収入がないこと(年間所得が130万円未満の収入)
- 他の人に扶養されていないこと
- 満60歳以上の父母および祖父母であること
この要件は、満60歳以上の父母および祖父母に限定されていますので、注意が必要です。
扶養手当の親(父母・祖父母)の年金等について
扶養手当の親(父母・祖父母)が年金等を受け取っている場合について説明します。
国家公務員の扶養手当について、親(父母・祖父母)が年金等を受給しており、その年間所得が130万円を超える場合、扶養手当の受給資格がなくなります。
さらに、年金以外にも、恩給、利子配当、農業所得なども所得に含まれますので、これらの収入も合算して扶養手当の受給資格の判断に影響します。
扶養手当の親(父母・祖父母)が別居している場合
国家公務員が単身赴任など一時的な理由以外で親(父母・祖父母)と別居している場合でも、以下の条件を満たせば扶養手当の受給が可能です。
- 別居中の扶養親族の総収入の推計額の3分の1以上が職員からの仕送りによって賄われていること
- 職員から別居中の扶養親族への仕送りが、金融機関を通じた月1回以上の継続的な振込みであること。
ただし、仕送り金を入手することが特別な事情により困難である場合はこの限りではありません。
ただし、別居中の扶養親族が複数いる場合は、その総収入推計額を合算します。
別居の扶養親族が入院や介護施設に入所している場合は、「仕送り金を入手することが特別な事情により困難である場合」に該当するとみなされます。
また、国家公務員が別居中の親(父母・祖父母)に対する扶養手当を受給する場合、別居の扶養親族として認定されるための手続きが必要です。
エビデンス扶養手当に係る認定等の取扱いに関する要綱・第6条
第6条 別居の扶養親族の認定
1.職員と同一の世帯に属さない者を扶養親族とする場合は、次に掲げる要件の全てを満たさなければならない。ただし、就学(学校教育法(昭和22年法律第26号)に定める学校への就学に限る。)、単身赴任等一時的な事情による別居と認められる場合は、この限りでない。
(1) 職員と世帯を異にする扶養親族(以下この条において「別居の扶養親族」という。)の総収入推計額の3分の1以上の額が、職員からの仕送りによるものであること。
(2) 職員から別居の扶養親族に対する仕送りの方法が、金融機関への月1回以上の継続的な振込みによるものであること。ただし、別居の扶養親族の入院、介護施設への入所その他金融機関への振込み以外の方法によらなければ仕送り金の入手が困難であると認められる特別な事情がある場合は、この限りでない。
(3) 別居の扶養親族が扶養能力を有する他の扶養義務者と同居していないこと。
2.別居の扶養親族に配偶者がある場合は、当該配偶者の総収入推計額を前項第1号に規定する別居の扶養親族の総収入推計額に合算するものとする。
出典:扶養手当に係る認定等の取扱いに関する要綱
親(父母・祖父母)の扶養手当の受給金額
親(父母・祖父母)の扶養手当に関する受給金額は、月額6,500円または月額3,500円です。
配偶者の扶養手当 | 金額 |
---|---|
行政職俸給表(一)7級以下の職員 | 月額6,500円 |
行政職俸給表(一)8級職員等 | 月額3,500円 |
※この規定は他の各俸給表にも適用されます。
国家公務員の扶養手当における孫・弟妹・重度心身障害者
国家公務員の扶養手当における孫・弟妹・重度心身障害者について、以下でまとめています。
孫・弟妹・重度心身障害者の扶養手当の要件
国家公務員の扶養手当における孫、弟妹、重度心身障害者の受給要件は以下の通りです。
孫・弟妹・重度心身障害者についての受給要件については、以下の通りです。
- 生計を一にしていること(日常の生活の資を共にすること)
- 生計を立てられる収入がないこと(年間所得が130万円未満の収入)
- 他の人の扶養者ではないこと
加えて、以下の特定要件も必要です。
孫 | 22歳以下の孫 ※満22歳の誕生日の前日以後の最初の3月31日までの間にある孫 |
---|---|
弟妹 | 22歳以下の弟妹 ※満22歳の誕生日の前日以後の最初の3月31日までの間にある弟妹 |
重度心身障害者 | 心身の障害の程度が終身労務に服することができない程度である者 |
孫と弟妹に関しては、子(子供)に適用される要件と同様です。
エビデンス:重度身体障害者扶養手当の運用について(人事院)
給与法第11条及び規則第2条関係
3.給与法第11条第2項第6号の「重度心身障害者」とは、心身の障害の程度が終身労務に服することができない程度である者をいう。
出典:扶養手当の運用について(人事院)
孫・弟妹・重度心身障害者の扶養手当の受給金額
国家公務員の扶養手当における孫、弟妹、重度心身障害者の受給金額は以下の通りです。
国家公務員の職員 | 金額 |
---|---|
行政職俸給表(一)7級以下の職員 | 月額6,500円 |
行政職俸給表(一)8級職員等 | 月額3,500円 |
まとめ
公務員の扶養手当制度は、職員がその家族を経済的に支援するための重要な福利厚生の一つです。
この扶養手当は、配偶者、子供、親、祖父母などの扶養親族を持つ職員に適用され、彼らの生活を安定させることを目的としています。
受給資格は、扶養している親族の年齢や所得、生計を共にしているかなど、具体的な条件に基づいています。また、扶養手当の金額は、扶養している親族の種類や職員の職務等級によって変わります。
扶養手当は、公務員家庭の経済的支柱であり、適切な理解と申請が職員の責務であると言えます。