地方公務員の任期付職員について説明していきます。

(※国家公務員の任期付職員とは多少異なりますので、注意してください。)

地方公務員の任期付職員とは

任期付職員とは、地方分権の進展に伴い、多様な任用・勤務形態を活用できるようにするため、専門的知識、経験が必要となる場合や市民サービスの提供体制を充実させる場合、部分休業を取得する職員の業務の代替などの場合に即戦力として任用する制度となります。

さらに任期付職員の任期は、3年以内(特に必要な場合は5年以内)、又は5年以内と決まっています。(任用期間、選考方法、試験日程等は各地方自治体の募集職務によって異なります。)

また、任期付職員は以下の4つに区分されます。

  1. 特定任期付職員(3条1項)
  2. 一般任期付職員(3条2項)
  3. 4条任期付職員(時限的な職・4条)
  4. 任期付短時間勤務職員(5条)

区分によって、要件・選考方法、任期が異なるため、注意しておきましょう。

任期付職員法とは?

任期付職員法(地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律)は簡単に説明すると、高度の専門性を備えた民間人材の活用等の観点から、専門的知識経験等を有する者等の採用を行う特例法となります。

そのため地方公共団体は、「任期付職員法(平成14年法律第48号)」の規定に基づき、条例で定めるところにより、任期付職員の採用を行うことが可能です。

身分は地方公務員となる

任期付職員の身分は「地方公務員」となります。

そのため、地方公務員法(守秘義務、信用失墜行為の禁止、政治的行為の制限、営利企業への従事制限等)の適用を受けます。

応募資格には以下のルールが適用される

職種に合わせた応募条件・資格要件等の他に、任期付職員は地方公務員となるため、以下の応募資格が必要となります。

  • (1)日本国籍を有する者
  • (2)地方公務員法第16条に定める次の欠格条項に該当しない者
    禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたはその執行を受けることがなくなるまでの者
    日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、またはこれに加入した者

任期付職員の特徴

任期付職員の特徴としては、職員の任期(1年~5年程度)の定めがある場合を除き、概ね正規職員と同様の業務や身分、待遇となる点であり、以下の通りです。

  • 任期付職員でも本格的業務に従事可能となります
  • 複数年(3年~5年以内)の任期で働くことができます
  • 賞与・ボーナス(期末手当・勤勉手当)が支給されます
  • 年次有給休暇、夏季休暇、忌引休暇等もあります
  • 通勤手当、時間外勤務手当、扶養手当(※1)、住居手当(※1)等が要件に応じて支給されます。
    ※1:任期付短時間勤務職員は支給されません

任期付職員のボーナス(期末手当・勤勉手当)は地方公務員と同様「2022年度(令和4年度)は年間で4.40月分」受け取ることが可能となります(年度によってボーナス割合が変わります)。

任期付職員は更新されるのか?

任期付職員は基本的に採用時に期限が決められており、期間が延長される・更新されることは稀と言えるでしょう。

(新たに任期付職員が採用できない場合や、空きがあれば更新の可能性もあるようですが、勤務する地方自治体によって大きく異なります。)

また、どれだけ更新された場合でも、最長が5年間となります。

任期付職員から正社員(正規雇用)になることは可能?

任期付職員から正社員(正規雇用)になることはありません。

法令や規則で定められており、正規職員として採用されるには「職員採用試験(地方公務員試験)」に合格する必要があるためです。

そのため、任期付職員として又は、任期後に職員採用試験(地方公務員試験)を受け、合格する必要があります。

※こちらも稀ですが、特定任期付職員等の場合、将来のキャリアとして新たな活躍できるフィールドが用意されている場合もあります。

任期付職員には大きく4つの種類がある

任期付職員には大きく以下の4つの種類があり、

  1. 特定任期付職員(3条1項)
  2. 一般任期付職員(3条2項)
  3. 4条任期付職員(時限的な職・4条)
  4. 任期付短時間勤務職員(5条)

以上の区分に分かれています。以下で詳しく説明していきます。

(1)特定任期付職員(3条1項)

要件
  • 高度の専門的知識経験等を有する者を一定の期間活用することが特に必要
採用方法 選考
任期 5年以内
採用職種例
  • 法務・訟務関係(弁護士)
  • 医療関係(医師)
  • 危機管理関係(地域防災マネージャー)
  • IT関係(CIO補佐官等)

特定任期付職員は、行政内部では得がたい高度な専門性が必要とされる分野で幅広く活用される任期付職員となります。

現在では、法務・訟務関係で活躍する弁護士や、医療関係で活躍する医師、DX化などのIT関係での採用が多いと言えます。

任期付職員法第3条1項・7条
任期付職員法第3条1項

任命権者は、高度の専門的な知識経験又は優れた識見を有する者をその者が有する当該高度の専門的な知識経験又は優れた識見を一定の期間活用して遂行することが特に必要とされる業務に従事させる場合には、条例で定めるところにより、職員を選考により任期を定めて採用することができる。
引用:地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律

任期付職員法第7条1項

任命権者は、条例で定めるところにより、第三条第一項の規定により任期を定めて採用された職員(次条において「特定任期付職員」という。)又は第三条第二項の規定により任期を定めて採用された職員(次条において「一般任期付職員」という。)の任期が五年に満たない場合にあっては、採用した日から五年を超えない範囲内において、その任期を更新することができる。
引用:地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律

(2)一般任期付職員(3条2項)

要件
  • 専門的な知識経験を有する者を、期間を限って業務に従事させることが必要
採用方法 選考
任期 5年以内
採用職種例
  • 福祉関係(保育士)
  • 教育研究関係(教諭)
  • 医療関係(看護師)

一般任期付職員は、人材確保や育成に時間を要する等、専門的分野で幅広く活用する職員を採用します。

主に、保育士や看護師などが多く職種として見受けられます。

任期付職員法第3条2項・7条
任期付職員法第3条2項

任命権者は、前項の規定によるほか、専門的な知識経験を有する者を当該専門的な知識経験が必要とされる業務に従事させる場合において、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときであって、当該者を当該業務に期間を限って従事させることが公務の能率的運営を確保するために必要であるときは、条例で定めるところにより、職員を選考により任期を定めて採用することができる。
引用:地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律

任期付職員法第7条1項

任命権者は、条例で定めるところにより、第三条第一項の規定により任期を定めて採用された職員(次条において「特定任期付職員」という。)又は第三条第二項の規定により任期を定めて採用された職員(次条において「一般任期付職員」という。)の任期が五年に満たない場合にあっては、採用した日から五年を超えない範囲内において、その任期を更新することができる。
引用:地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律

(3)4条任期付職員(時限的な職・4条)

要件
  1. 一定の期間内に終了することが見込まれる業務に従事
  2. 一定の期間内に限り業務量の増加が見込まれる業務に従事
採用方法 競争試験又は選考
任期 3年以内(特に必要な場合は5年以内)
採用職種例
  •  一般事務(窓口対応、庶務事務)
  • 福祉関係(保育士)
  • 土木・建築関係(設計・積算・監督)

生活保護ケースワーカーなどの一時的な業務量の増加に対応するための職や、イベント開催や施設整備、災害復興等、一時的な業務量への対応などのために活用する採用が多いと言えるでしょう。

任期付職員法第4条
任期付職員法第4条

任命権者は、職員を次の各号に掲げる業務のいずれかに期間を限って従事させることが公務の能率的運営を確保するために必要である場合には、条例で定めるところにより、職員を任期を定めて採用することができる。
引用:地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律

(4)任期付短時間勤務職員(5条)

要件
  1. 一定の期間内に終了することが見込まれる業務に従事
  2. 一定の期間内に限り業務量の増加が見込まれる業務に従事
  3. 住民に対するサービスの提供時間の延長、繁忙時における提供体制の充実等
  4. 部分休業を取得する職員の業務の代替
採用方法 競争試験又は選考
任期 3年以内(特に必要な場合は5年以内)
採用職種例
  • 福祉関係(保育士)
  • 一般事務関係(窓口対応)
  • 教育研究関係(図書館、児童支援員)

延長保育などのサービス提供時間の延長や土日の窓口サービスの開始などの提供体制の充実に対応するため、臨時・非常勤職員を任用してきた職について、任期付短時間勤務職員の職として転換を図る事例もあります。

主に、委託化を検討中の事業など、住民サービスの現場を中心に採用され、勤務時間は週31時間程度の勤務となります。

徴税等関係、医療関係、福祉関係、教育関係、行政サービス等、幅広い職種が採用されているケースが多いと言えるでしょう。

任期付職員法第5条
任期付職員法第5条

任命権者は、短時間勤務職員を前条第一項各号に掲げる業務のいずれかに従事させることが公務の能率的運営を確保するために必要である場合には、条例で定めるところにより、短時間勤務職員を任期を定めて採用することができる。
引用:地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律

補足:フルタイム任期付職員(俗称)

フルタイム任期付職員(俗称)は、名前の通り、フルタイムで働く任期付職員を指し、主に以下の区分の任期付職員を言います。

  • 特定任期付職員(3条1項)
  • 一般任期付職員(3条2項)
  • 4条任期付職員(時限的な職・4条)
ただし、地方自治体によって概念が異なるため、どの区分なのか確認するように注意しましょう。

区分によって、要件・選考方法、任期が異なります。

フルタイムは、一般的に8:30 ~ 17:15又は、9:30分~18:15分(昼休み1時間・週38時間45分)の勤務となります。

補足:競争試験と選考について

競争試験と選考には以下のような違いがあります。

競争試験 不特定多数の受験者を対象に成績主義の原則に基づき、試験の合計点(試験成績の高低の比較)により合格者の選抜を行う試験
選考 特定の候補者を対象に適性・能力・実績・意欲など、職にふさわしい能力(職務遂行能力)があるか否かを実証する方法

特定任期付職員などで、実績や免許・資格が必要な場合は選考となるケースもあります。

競争試験と選考について詳しくは「公務員における競争試験と選考の違いとは?」を確認しておきましょう。

まとめ

地方公務員の採用等の制度としては、正規雇用、任期付職員を始め、臨時的任用職員、会計年度任用職員、特別職非常勤職員などがあるため、間違いないように把握しておきましょう。

良くある質問まとめ

任期付職員とは、地方分権の進展に伴い、多様な任用・勤務形態を活用できるようにするため、専門的知識、経験が必要となる場合や市民サービスの提供体制を充実させる場合、部分休業を取得する職員の業務の代替などの場合に即戦力として任用する制度となります。

任期付職員のボーナス(期末手当・勤勉手当)は地方公務員と同様受け取ることが可能となります。
年度によってボーナス割合が変わり、2022年度(令和4年度)は年間で4.40月分となります。

地方公務員の任期付職員でも退職金は支給されます。
ただし、任期の期間に合わせて支給されるため、2年程度の場合、退職金は給与の1ヶ月分程度となります。

任期付職員も地方公務員となるため、雇用保険が適用されません。(雇用保険法第6条

特定任期付職員と一般任期付職員の違いは、任期付職員法(地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律)に記載されている通り、要件が異なります。
●特定任期付職員の要件:高度の専門的知識経験等を有する者を一定の期間活用することが特に必要。(行政内部では得がたい高度な専門性が必要とされる分野で幅広く活用される。)
●一般任期付職員の要件:専門的な知識経験を有する者を、期間を限って業務に従事させることが必要。(人材確保や育成に時間を要する等、専門的分野で幅広く活用される。)
採用方法が選考であることや、任期が5年以内であることは同様ですが、採用される要件や職種が違う点と、給与が異なります。

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ABOUTこの記事をかいた人

キャリアコンサルタント(国家資格) 真下 彩花

新卒で東証スタンダードに上場している会社に入社し、個人事業主・税理士などの経理・税務サポートを担当後、半導体・電子部品等の最大手(東証プライム上場)に転職し、営業支援に従事する。その後、ベンチャー企業での経理・採用経験を経て、2019年から株式会社pekoにて、公務員試験・求人情報「公務in」の運営、キャリアアドバイザーとして多くの転職者のサポートを担当中。

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