公務員を目指す方、又は公務員として働いている方、地域手当の詳細を把握していますでしょうか。
地域手当はすべての公務員に支給される手当ではありません。
全国の市区町村数は1,724です。(2023年6月21日現在:参照e-Stat)
その中で、地域手当に該当する市区町村は405件のため、全国の約23.5%の地域しか該当しない計算となります。
以下で、公務員の地域手当について、公務員の地域手当の支給割合と一覧を詳しく説明していきます。
※この記事は公務員(国家公務員、および地方公務員)に適用される内容です。
公務員の地域手当とは?
公務員の地域手当とは、民間の賃金水準を基礎とした地域の物価等の差を補填することが目的の手当であり、定められた一定の地域に勤務する公務員が受けることができます。
例えば、物価が高い地域である、首都圏や都市部の公務員に地域手当が支給されます。
また、公務員の地域手当の支給額(割合)は地域によって異なり、「人事院規則九―四九(地域手当)(e-Gov)」で詳細に決められています。
※地域によって異なりますが、国家公務員、地方公務員ともに、同様の支給額(割合)です。
公務員は他の地域に移動しても地域手当は異動保障される
地域手当が支給される地域に6ヵ月以上勤務している等の条件を満たした場合、異動の日から地域手当は3年間保証され、これを「地域手当の異動保障」と言います。
地域手当の異動保障は、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- 地域手当支給地域に6ヵ月を超えて勤務していること
- 地域手当の支給がない地域、又は地域手当が低い地域に異動すること
- 異動の日から3年以内に退職しないこと
なお、地域手当の異動保障の額は、地域手当支給地域に勤務していた際の地域手当の額(割合)と同額です。
例えば、東京都内に6ヵ月間勤務し、地域手当出ない青森県に異動した場合、3年間は東京都の地域手当を受け取ることができます。
公務員の地域手当はボーナス(期末手当・勤勉手当)にも影響する
公務員のボーナスである、期末手当と勤勉手当ですが、以下の計算方式で支給されます。
- 期末手当の支給額 = 期末手当基礎額 × 支給月数 × 在職期間率
- 勤勉手当の支給額 = 算定基礎額 × 成績率 × 在職期間率
この「期末手当基礎額」と「算定基礎額」の計算中には「地域手当率」が入っているため、地域手当は公務員のボーナスに影響します。
つまり、地域手当の支給割合が高い地域は、必然的にボーナス(期末手当・勤勉手当)は高くなるということです。
公務員の地域手当の支給割合
公務員の地域手当の支給割合については、「人事院規則九―四九(地域手当)(e-Gov)」によって、その地域の物価や民間賃金の高さに合わせて、以下の級地区分の7段階に分けられています。
級地区分 | 地域手当の支給割合 |
---|---|
1級地 | 20% |
2級地 | 16% |
3級地 | 15% |
4級地 | 12% |
5級地 | 10% |
6級地 | 6% |
7級地 | 3% |
※級地区分とは、公務員の給与を地域ごとに区分したものであり、物価水準や勤務地の状況などを反映し、決定されます。
また、以下の一部の航空区域は、以下の割合と定められています。
- 成田国際空港の区域:16%
- 中部国際空港の区域:12%
- 関西国際空港の区域:12%
以下より、地域手当の計算式等を確認してみましょう。
公務員の地域手当の計算方法
公務員の地域手当の計算方法は、以下の計算式によって算出されます。
- (俸給+俸給の特別調整額+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額×支給割合
俸給と扶養手当等、地域手当の支給割合により、各公務員の地域手当が変わってくことが分かります。
例としては、月給が30万円の場合で、東京23区に勤務している場合(1級地20%)は、30万円×20%で6万円になります。
また、地域手当は、公務員の給与の一部として支給される手当のため、税金が課せられます。
地域手当の見直し期間
地域手当の支給地域・支給割合の見直し「人事院規則9-49第16条(e-Gov)」によって定められており、「10年ごとに見直すのを例とする」とされています。
そのため、次回の地域手当の見直しは2024年です。
※令和4年(2022年)8月8日に行われた人事院勧告(人事院が国会に対して行う、国家公務員の給与、勤務時間、休日等に関する勧告)では、2024年の地域手当見直しに際し、必要な給与制度上の措置の成案を示し施策を講ずることを目指すとしています。
公務員の地域手当一覧
以下は、公務員が支給される地域手当の支給地域と級地、支給割合をまとめた一覧です。
都道府県 | 支給地域 | 級地(支給割合) |
---|---|---|
北海道 | 札幌市 | 7級地(3%) |
宮城県 | 多賀城市 | 5級地(10%) |
仙台市 | 6級地(6%) | |
名取市 | 7級地(3%) | |
茨城県 | 取手市、つくば市 | 2級地(16%) |
守谷市 | 3級地(15%) | |
牛久市 | 4級地(12%) | |
水戸市、日立市、土浦市、龍ケ崎市 | 5級地(10%) | |
古河市、ひたちなか市、神栖市 | 6級地(6%) | |
笠間市、鹿嶋市、筑西市 | 7級地(3%) | |
栃木県 | 宇都宮市、大田原市、下野市 | 6級地(6%) |
栃木市、鹿沼市、小山市、真岡市 | 7級地(3%) | |
群馬県 | 高崎市 | 6級地(6%) |
前橋市、太田市、渋川市 | 7級地(3%) | |
埼玉県 | 和光市 | 2級地(16%) |
さいたま市、志木市 | 3級地(15%) | |
東松山市、朝霞市 | 4級地(12%) | |
坂戸市 | 5級地(10%) | |
川越市、川口市、行田市、所沢市、飯能市、加須市、春日部市、羽生市、 鴻巣市、深谷市、上尾市、草加市、越谷市、戸田市、入間市、久喜市、 三郷市、幸手市、比企郡滑川町、比企郡鳩山町、北葛飾郡杉戸町 |
6級地(6%) | |
熊谷市 | 7級地(3%) | |
千葉県 | 袖ケ浦市、印西市 | 2級地(16%) |
千葉市、成田市 | 3級地(15%) | |
船橋市、浦安市 | 4級地(12%) | |
市川市、松戸市、佐倉市、市原市、富津市 | 5級地(10%) | |
野田市、茂原市、東金市、柏市、流山市、印旛郡酒々井町、印旛郡栄町 | 6級地(6%) | |
木更津市、君津市、八街市 | 7級地(3%) | |
東京都 | 特別区(東京23区) | 1級地(20%) |
武蔵野市、調布市、町田市、小平市、日野市、国分寺市、 狛江市、清瀬市、多摩市 |
2級地(16%) | |
八王子市、青梅市、府中市、昭島市、東村山市、国立市、 福生市、稲城市、西東京市 |
3級地(15%) | |
立川市、東大和市 | 4級地(12%) | |
三鷹市、あきる野市 | 5級地(10%) | |
東久留米市 | 6級地(6%) | |
武蔵村山市 | 7級地(3%) | |
神奈川県 | 横浜市、川崎市、厚木市 | 2級地(16%) |
鎌倉市 | 3級地(15%) | |
相模原市、藤沢市 | 4級地(12%) | |
横須賀市、平塚市、小田原市、茅ヶ崎市、大和市 | 5級地(10%) | |
三浦市、秦野市、三浦郡葉山町、中郡二宮町 | 6級地(6%) | |
新潟県 | 新潟市 | 7級地(3%) |
富山県 | 富山市 | 7級地(3%) |
石川県 | 金沢市、河北郡内灘町 | 7級地(3%) |
福井県 | 福井市 | 7級地(3%) |
山梨県 | 甲府市 | 6級地(6%) |
南アルプス市 | 7級地(3%) | |
長野県 | 塩尻市 | 6級地(6%) |
長野市、松本市、諏訪市、伊那市 | 7級地(3%) | |
岐阜県 | 岐阜市 | 6級地(6%) |
大垣市、多治見市、美濃加茂市、各務原市、可児市 | 7級地(3%) | |
静岡県 | 静岡市、沼津市、磐田市、御殿場市 | 6級地(6%) |
浜松市、三島市、富士宮市、富士市、焼津市、 掛川市、藤枝市、袋井市 |
7級地(3%) | |
愛知県 | 刈谷市、豊田市 | 2級地(16%) |
名古屋市、豊明市 | 3級地(15%) | |
西尾市、知多市、みよし市 | 5級地(10%) | |
岡崎市、瀬戸市、春日井市、豊川市、津島市、碧南市、安城市、 犬山市、江南市、田原市、弥富市、西春日井郡豊山町 |
6級地(6%) | |
豊橋市、一宮市、半田市、常滑市、小牧市、海部郡飛島村 | 7級地(3%) | |
三重県 | 鈴鹿市 | 4級地(12%) |
四日市市 | 5級地(10%) | |
津市、桑名市、亀山市 | 6級地(6%) | |
名張市、伊賀市 | 7級地(3%) | |
滋賀県 | 大津市、草津市、栗東市 | 5級地(10%) |
彦根市、守山市、甲賀市 | 6級地(6%) | |
長浜市、東近江市 | 7級地(3%) | |
京都府 | 京田辺市 | 4級地(12%) |
京都市 | 5級地(10%) | |
宇治市、亀岡市、向日市、木津川市 | 6級地(6%) | |
大阪府 | 大阪市、守口市 | 2級地(16%) |
池田市、高槻市、大東市、門真市 | 3級地(15%) | |
豊中市、吹田市、寝屋川市、箕面市、羽曳野市 | 4級地(12%) | |
堺市、枚方市、茨木市、八尾市、柏原市、東大阪市、交野市 | 5級地(10%) | |
岸和田市、泉大津市、泉佐野市、富田林市、河内長野市、 和泉市、藤井寺市、泉南市、阪南市、泉南郡熊取町、 泉南郡田尻町、泉南郡岬町、南河内郡太子町 |
6級地(6%) | |
兵庫県 | 西宮市、芦屋市、宝塚市 | 3級地(15%) |
神戸市 | 4級地(12%) | |
尼崎市、伊丹市、川西市、三田市 | 5級地(10%) | |
明石市、赤穂市 | 6級地(6%) | |
姫路市、加古川市、三木市 | 7級地(3%) | |
奈良県 | 天理市 | 4級地(12%) |
奈良市、大和郡山市 | 5級地(10%) | |
大和高田市、橿原市、香芝市、北葛城郡王寺町 | 6級地(6%) | |
桜井市、宇陀市 | 7級地(3%) | |
和歌山県 | 和歌山市、橋本市 | 6級地(6%) |
岡山県 | 岡山市 | 7級地(3%) |
広島県 | 広島市 | 5級地(10%) |
三原市、東広島市、廿日市市、安芸郡海田町、安芸郡坂町 | 7級地(3%) | |
山口県 | 周南市 | 7級地(3%) |
徳島県 | 徳島市、鳴門市、阿南市 | 7級地(3%) |
香川県 | 高松市 | 6級地(6%) |
坂出市 | 7級地(3%) | |
福岡県 | 福岡市、春日市、福津市 | 5級地(10%) |
太宰府市、糸島市、糟屋郡新宮町、糟屋郡粕屋町 | 6級地(6%) | |
北九州市、筑紫野市、糟屋郡宇美町 | 7級地(3%) | |
長崎県 | 長崎市 | 7級地(3%) |
支給対象地域のある都道府県数は32件、支給対象地域にある市区町村数は405件です。地域手当の支給地域・支給割合の見直しにより、対象地域等は増加傾向にあります。
また、国家公務員でも地方公務員でも、地域手当の支給地域に該当しなければ、地域手当は支給されません。
級地における市区町村数の割合
級地における市区町村数(405件)の割合は以下の通りです。
級地区分 | 該当する市区町村数の割合(数) |
---|---|
1級地 | 1.3%(23) |
2級地 | 1.4%(24) |
3級地 | 1.8%(31) |
4級地 | 1.3%(23) |
5級地 | 3.1%(54) |
6級地 | 8.6%(150) |
7級地 | 5.7%(100) |
6級地の割合が全体の8.6%と最も高く、150件の市区町村が該当します。
公務員の地域手当ランキング
級地が1級地、2級地、3級地に入る、市区町村をランキング形式でお伝えします。
- 【東京都】特別区(東京23区)
- 【茨城県】取手市、つくば市
【埼玉県】和光市
【千葉県】袖ケ浦市、印西市
【東京都】武蔵野市、調布市、町田市、小平市、日野市、国分寺市、狛江市、清瀬市、多摩市
【神奈川県】横浜市、川崎市、厚木市
【愛知県】刈谷市、豊田市
【大阪府】大阪市、守口市 - 【茨城県】守谷市
【埼玉県】さいたま市、志木市
【千葉県】千葉市、成田市
【東京都】八王子市、青梅市、府中市、昭島市、東村山市、国立市、福生市、稲城市、西東京市
【神奈川県】鎌倉市
【愛知県】名古屋市、豊明市
【大阪府】池田市、高槻市、大東市、門真市
【兵庫県】西宮市、芦屋市、宝塚市
※支給割合(1)20%、(2)16%、(3)15%
以上の市区町村に該当する公務員の方は、必然的に月給が高く、さらに年収は他の公務員より多いことが予想されます。
まとめ
国家公務員でも、地方公務員でも地域手当が出る地域、地域手当がでない地域があることが、今回の内容で分かったと思います。
東京都23区などは、地域手当が1級地で割合が20%と、一番高い地域手当が支給されますが、家賃や物価などは他の都道府県と比較して非常に高いです。
そのため、給与が高いだけにとらわれることなく、公務員として働く地域を考えて選択してはいかがでしょうか。