国家公務員に対する住居手当(家賃補助)は、家賃が月額16,000円を超える職員に月額28,000円を上限として支給されます。
地方公務員については、自治体によって差があり、月額8,000円から28,000円までが住居手当(家賃補助)の上限となるケースが多いです。
以下は地方公務員として働く関東の自治体等の住居手当(家賃補助)の支給例です。
自治体名 | 上限金額 | 支給要件等 |
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東京都庁 | 月額15,000円(単身者) 又は30,000円(単身赴任者) |
31歳未満で家賃15,000円以上 |
千代田区役所 | 月額27,000円 | 31歳以下で家賃27,000円以上 |
神奈川県庁 | 月額28,500円 | 家賃12,000円以上 |
埼玉県庁 | 月額28,000円 | 家賃16,000円以上 |
千葉県庁 | 月額28,000円 | 家賃16,000円以上 |
(調査日:2024年2月時点)
以下では、国家公務員および地方公務員に対する住居手当(家賃補助)について、条件、上限額などを詳細かつ分かりやすく解説していきます。
国家公務員の住居手当(家賃補助)
国家公務員に支給される住宅手当(家賃補助)は、以下の2つのケースで支給されます。
- 自分自身が住むために家を借りた職員に対して支給される住宅手当(単身者)
- 単身赴任手当を受け取っている職員で、配偶者などが住むために家を借りている場合の住宅手当
以下では、国家公務員に支給される住宅手当(家賃補助)に関して、分かりやすく説明していきます。
また、国家公務員に支給される住宅手当に関しては、「一般職の職員の給与に関する法律 e-GOV(国家公務員法第2条に規定する一般職に属する国家公務員の給与に関する事項を定めることを目的として制定された法律)」で説明されています。
国家公務員の住宅手当の支給要件(単身者)
国家公務員の職員が住宅手当は以下の支給要件を満たすことで、上限28,000円/月を受けることが可能です。
対象職員 |
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対象外 |
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要件 |
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上限金額 |
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※1:配偶者等には、職員の配偶者や職員の直系親族(父母や子)およびその配偶者(例:妻の両親や兄弟)が含まれます。
注意点として、扶養親族や配偶者等以外の人物による賃料負担(事実上の賃料負担を含む)は、この住宅手当の対象とはなりません。
一般職の職員の給与に関する法律(第11条の10の1項・2項)一般職の職員の給与に関する法律(第11条10項1号1)
住居手当は、次の各号のいずれかに該当する職員に支給する。
1.自ら居住するため住宅(貸間を含む。次号において同じ。)を借り受け、月額一万六千円を超える家賃(使用料を含む。以下同じ。)を支払つている職員(国家公務員宿舎法第十三条の規定による有料宿舎を貸与され、使用料を支払つている職員その他人事院規則で定める職員を除く。)
出典:一般職の職員の給与に関する法律 e-GOV
給与法第11条の10関係(人事院)
1.第1項第1号に規定する住宅は職員が居住している住宅であつて、当該職員の生活の本拠となつているもの、同項第2号の「配偶者が居住するための住宅」は配偶者が居住している住宅であつて、配偶者の生活の本拠となつているものに限るものとする。
2.第1項第1号に掲げる職員については、次に掲げるところによる。
(1)第1項第1号に掲げる職員には、職員の扶養親族たる者が借り受けた住宅に居住し、家賃を支払っている職員を含むものとし、職員が職員又はその扶養親族たる者と次に掲げる者(以下「配偶者等」という。)とが共同して借り受けている住宅に当該配偶者等と同居し、家賃を支払っている場合においては、その生計を主として支えている職員に限り同号に掲げる職員に含まれるものとする。
ア:職員の配偶者
イ:職員の一親等の血族又は姻族である者
(2)一に定める場合を除き、住宅を借り受けた者と共にその借受けに係る住宅に居住している職員は、家賃を事実上負担している場合においても、この条の第1項第1号に掲げる職員たる要件を具備している職員には該当しない。
出典:人事院 住居手当の運用について
持ち家に賃料を払って住んでいる場合は支給される?
国家公務員である職員が、自己所有の住宅(持ち家)に住んでいる場合、住宅手当は支給されません。
過去には、新築や購入から5年以内の持ち家に住む国家公務員に対し、年間30,000円(月額2,500円)の住居手当が支給されていました。しかし、この制度は2009年(平成21年)に廃止されました。
参照:人事院 給与勧告の骨子
国家公務員の住宅手当の支給要件(単身赴任等)
単身赴任手当を支給される職員等の場合、「配偶者等が居住するための住宅」を借り受け、月額16,000円を超える家賃を支払っている場合にも、「上限14,000円/月」支給されます。
対象職員 |
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補足情報 |
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要件 |
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上限金額 |
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この住宅手当は、単身赴任している職員が家族を支援するためのものです。
職員やその扶養親族、直系親族、または配偶者と共同で借りている住宅でも、この手当の対象になり得ます。ただし、有料宿舎や人事院規則で特定された住宅に住んでいる場合は、この手当は受けられません。
一般職の職員の給与に関する法律(第11条10項1号2)一般職の職員の給与に関する法律(第11条10項1号2)
2.第十二条の二第一項又は第三項の規定により単身赴任手当を支給される職員で、配偶者が居住するための住宅(国家公務員宿舎法第十三条の規定による有料宿舎その他人事院規則で定める住宅を除く。)を借り受け、月額一万六千円を超える家賃を支払つているもの又はこれらのものとの権衡上必要があると認められるものとして人事院規則で定めるもの
出典:一般職の職員の給与に関する法律 e-GOV
給与法第11条の10関係(人事院)
4.第1項第2号に掲げる職員については、次に掲げるところによる。
(1)第1項第2号に掲げる配偶者が居住するための住宅を借り受けている職員には、職員の扶養親族たる者が借り受けた住宅に居住する配偶者がある職員で、その住宅の家賃を支払つているものを含むものとし、職員が配偶者の居住する住宅で次に掲げるものに係る家賃を支払つている場合においては、その生計を主として支えている職員に限り同号に掲げる職員に含まれるものとする。
ア:職員又はその扶養親族たる者と職員の一親等の血族又は姻族である者とが共同して借り受け、当該一親等の血族又は姻族である者が居住している住宅
イ:職員又はその扶養親族たる者と職員の扶養親族でない配偶者とが共同して借り受けている住宅
(2)一に定める場合を除き、住宅を借り受けた者と共にその借受けに係る住宅に居住する配偶者がある職員は、家賃を事実上負担している場合においても、この条の第1項第2号に掲げる職員たる要件を具備している職員には該当しない。
出典:人事院 住居手当の運用について
住宅手当の賃料以外の対象について(共益費・管理費等)
国家公務員の住宅手当の対象は、「賃料(家賃)」のみです。
共益費、管理費、駐車場代などの費用は、「月額16,000円を超える家賃」という住宅手当の支給条件には含まれません。
従って、共益費や管理費を含めて合計が16,000円を超えていても、賃料自体が16,000円を超えない場合は、住宅手当を受けることはできません。
家賃には含まれないもの
- 権利金、敷金、礼金、保証金その他これらに類するもの
- 電気、ガス、水道等の料金
- 団地内の児童遊園、外燈その他の共同利用施設に係る負担金(共益費)
- 店舗付住宅の店舗部分その他これに類するものに係る借料
国家公務員の住宅手当の上限
国家公務員である職員の住宅手当の上限は月額28,000円です。
しかし、配偶者等が借家・借間に居住する単身赴任手当受給職員の場合は以下のように異なります。
借家・借間居住職員 | 上限28,000円/月 |
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配偶者等が借家・借間に居住する単身赴任手当受給職員の場合 | 上限14,000円/月 |
国家公務員の住宅手当の計算
国家公務員の住宅手当の計算方法は以下の通りです。
賃料 | 住宅手当の計算方法 |
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16,001円以上~27,000円以下 | 賃料 – 16,000円 |
27,001円以上 | (賃料 – 27,000円)÷ 2 + 11,000円 |
※百円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てた額
例えば、賃料6万円の住宅を借りた場合、「(60,000円-27,000円)÷2+11,000円=27,500円」となり、「百円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てた額」となるため、住宅手当は27,000円/月となります。
一般職の職員の給与に関する法律(第11条10項2号1・2、3号)
2.住居手当の月額は、次の各号に掲げる職員の区分に応じて、当該各号に定める額(当該各号のいずれにも該当する職員にあつては、当該各号に定める額の合計額)とする。
(1)前項第一号に掲げる職員 次に掲げる職員の区分に応じて、それぞれ次に定める額(その額に百円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てた額)に相当する額
イ:月額二万七千円以下の家賃を支払つている職員 家賃の月額から一万六千円を控除した額
ロ:月額二万七千円を超える家賃を支払つている職員 家賃の月額から二万七千円を控除した額の二分の一(その控除した額の二分の一が一万七千円を超えるときは、一万七千円)を一万千円に加算した額
(2)前項第二号に掲げる職員 前号の規定の例により算出した額の二分の一に相当する額(その額に百円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てた額)
3.前二項に規定するもののほか、住居手当の支給に関し必要な事項は、人事院規則で定める。
出典:一般職の職員の給与に関する法律 e-GOV
住宅手当の賃料以外の費用が含まれている場合の計算方法
国家公務員の住宅手当に該当する賃料以外の費用が賃料に含まれている場合でかつ、賃料の額が明確でない場合は、以下の金額を賃料とします。
食費等が含まれている場 | その支払額の100分の40に相当する額 |
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電気、ガス又は水道の料金が含まれている場合 | その支払額の100分の90に相当する額 |
例えば、賃料10万円に食費等が含まれており、賃料の額が明確でない場合は、賃料は6万円とみなすということです。
規則第8条関係:住居手当の運用について(人事院)規則第8条関係:住居手当の運用について(人事院)
規則第7条関係
家賃の額が明確でない場合における家賃の額に相当する額は、次に掲げる場合の区分に応じて、それぞれ次に定めるとおりとする。
1.居住に関する支払額に食費等が含まれている場合 その支払額の100分の40に相当する額
2.居住に関する支払額に電気、ガス又は水道の料金が含まれている場合 その支払額の100分の90に相当する額
出典:人事院 住居手当の運用について
国家公務員同士が同性していた場合の住宅手当
国家公務員同士が同居している場合(親族や夫婦でない場合)でも、住宅手当の受給は可能ですが、両者が受給することはできません。
どちらか一方だけが申請して住宅手当を受けることができます。受給するには、申請する職員が月額16,000円以上の家賃を支払っている必要があります。
また、婚姻済みの夫婦が共に国家公務員である場合でも、住宅手当を2人分受け取ることはできません。
月の途中で引っ越しした場合の国家公務員の住宅手当
国家公務員に支払われる住宅手当では、日割り計算は適用されません。
その結果、月の途中で引っ越しをしても、住宅手当の対象となるのは翌月からです。このため、住宅手当の対象となるためには、15日以内に届け出を行う必要があります。
さらに、住宅手当を受けるためには、該当日に実際に居住している(住んでいる)必要があります。
地方公務員の住居手当(家賃補助)
地方公務員の住宅手当(家賃補助)に関して、上限や計算方法等を含め、以下で説明していきます。
地方公務員の住宅手当の上限や計算方法
自治体における住居手当(家賃補助)は、各自治体が独自の条例や規則に基づいて定めています。
そのため、勤務する自治体によって、住宅手当の支給条件や額に違いがあります。
それでも多くの自治体では、以下のような国家公務員の場合と類似したケースにおいて手当が支給される傾向にあります。
自治体の住宅手当例
対象職員 | 職員が自ら居住する住宅 |
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要件 | 月額16,000円を超える家賃を支払っている場合 |
上限金額 | 月額28,000円まで |
計算方法 | 16,001円以上~27,000円以下:賃料 – 16,000円 27,001円以上:(賃料 – 27,000円)÷ 2 + 11,000円 |
地方公務員の住宅手当は国家公務員のそれと似ていますが、自治体における転勤が比較的少ないため、「配偶者等が居住するための住宅」に関する規定は存在しない自治体の方が多いでしょう。
地方公務員の住宅手当、持ち家での支給はある?
持ち家に住んでいる場合でも住宅手当を支給する自治体は、ほとんどないと言っても良いでしょう。
たとえば、神奈川県庁は自己所有の住宅に住む職員に対して月額6,300円の支給を行っていましたが、2009年(平成21年)に廃止されました。
この動向は国家公務員においても同様で、2009年の制度廃止以降、持ち家に対する住宅手当を支給する自治体は大幅に減少しています。
地方公務員の住宅手当は何歳まで
地方公務員の住宅手当支給要件は自治体ごとに異なります。
例えば、東京都庁では、30歳以下の職員が要件を満たせば住宅手当を受け取ることができます。
一方、千代田区役所では、年齢に関係なく要件を満たす全職員が手当を受け取れますが、年齢による加算制度が設けられている場合があります。
したがって、地方公務員として住宅手当を受けるにあたり、自身が勤務する自治体の条例や規定を確認することが重要です。
地方公務員同士で同棲している場合の住宅手当は?
地方公務員同士で同棲している場合は、受け取れる住宅手当は勤務先の自治体の条例や規定によって異なりますが、原則として一方のみが住宅手当を受給できます。
ただし、そのためには勤務する自治体の住宅手当支給の条件を満たしている必要があります。
自治体の住宅手当例
以下では、地方公務員が働く各自治体の住宅手当の例です。
気になる自治体は確認しておきましょう。
東京都庁の場合東京都庁の場合
自治体名 | 東京都庁 |
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住宅手当の支給上限 |
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計算方法等 |
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出典 | 住居手当に関する規則 |
千代田区役所の場合
自治体名 | 千代田区役所 |
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住宅手当の支給上限 |
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計算方法等 |
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支給対象の職員 |
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出典 | 人事行政の運営の状況等の公表・令和5年12月(千代田区) |
神奈川県庁の場合
自治体名 | 神奈川県庁 |
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住宅手当の支給上限 | 月額28,500円 |
計算方法等 |
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支給対象の職員 | 世帯主である職員が所有する住宅に住居している場合又は職員が借り受けた住宅に居住していて月額12,000円を超える家賃を支払っている場合に支給 |
出典 | 神奈川県の給与・定員管理等について |
埼玉県庁の場合
自治体名 | 埼玉県庁 |
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住宅手当の支給上限 |
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計算方法等 |
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支給対象の職員 |
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出典 | 埼玉県の給与・定員管理等について(令和4年度) |
千葉県庁の場合
自治体名 | 千葉県庁 |
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住宅手当の支給上限 |
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計算方法等 |
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支給対象の職員 |
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出典 | ちば県民だより(令和4年12月号)4面 |
まとめ
公務員の住居手当は、住宅の賃貸に伴う経済的負担を軽減するための制度です。
しかし、公務員に対する住居手当(家賃補助)の支給条件や金額は、国家公務員と地方公務員で異なり、また地方公務員の場合は勤務する自治体によっても差があります。
国家公務員の場合の住居手当(家賃補助)は、家賃が月額16,000円を超える場合に支給され、上限は28,000円です。しかし、自己所有の住宅(持ち家)に住んでいる場合や有料宿舎等に住んでいる場合は支給の対象外となります。
地方公務員においても基本的な支給基準は国家公務員に類似していますが、一部の自治体では年齢に応じて支給条件が設けられていることや、上限金額が異なる場合があります。
また、特に自治体の場合は、地方公務員採用試験等における募集要項において、詳しく住居手当(家賃補助)のことを説明している場合は限りなく少ないです。
そのため、地方公務員の住居手当(家賃補助)を知りたい場合は、各自治体の条例や規定を確認する必要があるでしょう。