国家公務員の採用選考である官庁訪問。

しかし、その内容や時期・スケジュールに関して、十分に理解している人は意外と少ないかもしれません。

以下では、官庁訪問について詳しく解説しながら、官庁訪問の内容の詳細や時期・スケジュール(春試験・秋試験)について詳しく説明していきます。

当ページの多くは、前年(令和5年度・2023年度)の官庁訪問を例に記載されています。

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官庁訪問とは

官庁訪問とは

官庁訪問とは、国家総合職、国家一般職の試験(院卒者・大卒程度試験)に合格した者が、志望する各官庁を訪問し、業務説明や面接を受けるものを言います。

一般企業で言うところの、採用選考の活動を同じことを意味します。

そのため、「国家総合職、国家一般職の試験の合格者」が必ずしも採用されるわけではなく、官庁訪問を経て、就職先を決定するものです。

また、採用試験前に行われる各官庁で行われる業務説明会とは、別のものです。

参照:人事院・官庁訪問に関するQ&A

最終試験の合格者は官庁訪問の権利を得る

国家総合職、国家一般職の試験(院卒者・大卒程度試験)に合格した者が、官庁訪問の権利を得ることとなります。

この官庁訪問の権利は、最終合格日から3年間有効です。

そのため、官庁訪問には過年度試験の合格者もいます。

官庁訪問の目的

官庁訪問の目的は、単に直接的な就職活動を超え、キャリア構築に有益な情報を得ることにもあります。

加えて、この活動は受験者が志望する官庁についての理解を深める機会を提供し、自身を積極的にアピールする場でもあります。官庁訪問を通じて、学生や求職者は内々定や内定といった、官庁からの採用意向を示す通知を受け取ることが可能となります。

従って、学生や求職者は、官庁訪問を利用して、該当組織が直面する課題、組織文化、職務内容、採用過程について学びます。

官庁訪問ルールについて

官庁訪問に関するルール(日程・制約・その他の事項)については、毎年度の「各省庁人事担当課長申合せ」により決定され、これを「官庁訪問ルール」と言います。

そのため、毎年度の「官庁訪問ルール」を受験者は確認することが必要です。

また、毎年度の「各省庁人事担当課長申合せ」については、「国家公務員試験採用情報NAVI」に掲載されます。

働きながら官庁訪問は可能?

社会人が働きながら官庁訪問を行うことは可能です。実際に社会人が内定をもらったケースも少なくありません。

ただし、以下で説明する第4クールに官庁訪問は分かれており、第1クール目では最大3つの官庁に官庁訪問を行うことができますが、第一志望・第二志望まで絞り込んでの活動が要求されます。

また、第1クールのみ、受験者側からオンライン面接を希望することも可能です。

いずれにせよ、他の学生と比較して時間的に余裕がないため、考えたスケジューリングが必要です。

中途採用の試験では官庁訪問がない?

社会人を対象としている国家公務員の経験者採用試験については、(試験に)最終合格すれば、原則採用されます。

そのため、国家公務員の経験者採用(社会人採用)については、官庁訪問がありません

しかし、係長級(事務)の合同試験においては、採用を希望する省庁に官庁訪問を行い、採用面接を受ける必要があります。

参照:人事院・経験者採用試験に関するQ&A

官庁訪問の時期やスケジュール(春試験・秋試験)

官庁訪問の時期やスケジュール(春試験・秋試験)

官庁訪問の時期やスケジュールは、「国家総合職(院卒者・大卒程度)・春試験」と、「国家総合職(大卒程度)教養区分・秋試験」に分かれます。

令和5年度(2023年度)では、「国家総合職・春試験」では、官庁訪問は2023年6月12日から開始され、「国家総合職・秋試験」では、2023年12月15日より開始されています。

以下では、令和5年度(2023年度)の試験・官庁訪問のスケジュール例をご紹介します。

国家総合職(院卒者・大卒程度):春試験

令和5年度(2023年度)の「国家総合職(院卒者・大卒程度):春試験」の試験申込から採用までのスケジュールは以下の通りです。

申込受付期間 2023年3月1日(水)~2023年3月20日(月)
第1次試験日 2023年4月9日(日)
第1次試験合格者発表日 2023年4月21日(金)
第2次試験日(筆記) 2023年5月7日(日)
第2次試験日(政策課題討議・人物) 2023年5月中旬~2023年5月下旬
官庁訪問事前予約 2023年6月1日(木)以降開始
最終合格者発表日 2023年6月8日(木)16時
官庁訪問 2023年6月12日(月)8時30分以降開始
内々定 2023年6月22日(木)17時解禁
内定 2023年10月1日(日)以降
採用 2024年4月1日(月)

参照:人事院:国家公務員採用総合職試験(院卒者試験)国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)(教養区分を除く)2023年度版総合職試験(春試験)官庁訪問ガイド

特徴としては、国家総合職(院卒者・大卒程度)の合格発表前に、官庁訪問事前予約がスタートされます。

国家総合職(大卒程度)教養区分:秋試験

令和5年度(2023年度)の「国家総合職(大卒程度)教養区分:秋試験」の試験申込から採用までのスケジュールは以下の通りです。

申込受付期間 2023年7月28日(金)9:00~8月21日(月)
第1次試験日 2023年10月1日(日)
第1次試験合格者発表日 2023年10月2日(月)11時、10月9日(月)17時
第2次試験日(筆記) 2023年11月25日(土)
第2次試験日(政策課題討議・人物) 2023年11月26日(日)
官庁訪問事前予約 2023年12月13日(水)
最終合格者発表日 2023年12月13日(水)9時
官庁訪問 2023年12月15日(金)9時以降開始
内定 2023年12月20日(水)9時解禁
採用 2024年4月1日(月)

出典:人事院:国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)教養区分2023年度版総合職試験(教養区分)官庁訪問ガイド

「国家総合職(院卒者・大卒程度)・春試験」と「国家総合職(大卒程度)教養区分:秋試験」が異なる点としては、「内々定(内定の前段階で官庁から求職者に対して、ある程度の採用意向を示す通知のこと)」がありません。

官庁訪問の面接やクール制等の内容について

官庁訪問の面接やクール制等の内容について

以下では、官庁訪問のクール制の説明や、実際に行われる面接の内容、1日の流れ等を説明していきます。

官庁訪問は4クールに分かれている

官庁訪問は、クール制によって分けられており、第4クールまで進むと内々定や内定をもらうことが可能です。

以下は、令和5年度(2023年度)の「国家総合職(院卒者・大卒程度):春試験」のクール例です。

予約 ・第1クールの予約を行う
※予約は1日1省庁に限られる
第1クール 【各3日間】
・同一省庁への訪問は3日間のうち1回まで(同一省庁に2回訪問不可)
・希望する省庁を複数(原則3つ)官庁訪問できる
第2クール 【各3日間】
・同一省庁への訪問は3日間のうち1回まで(同一省庁に2回訪問不可)
・希望する省庁を複数(3つ程度)官庁訪問できる
※第1クールで合格をもらった省庁のみ官庁訪問できる
※官庁訪問する日程が同じ場合は、省庁を選択する必要がある
第3クール ・第2クールが終わると「リセット(前のクールの訪問先・訪問順に制限されることなく訪問可能)」される
・同一省庁への訪問は2日間のうち1回まで(同一省庁に翌日訪問不可)
※第2クールで合格をもらった省庁の中で、内々定が欲しい省庁に官庁訪問する
第4クール ・第3クールが終わると「リセット(前のクールの訪問先・訪問順に制限されることなく訪問可能)」される
・6月22日(木)17時以降に「内々定」が解禁される
※第3クールで訪問した省庁に再度、官庁訪問する

また、官庁訪問では、業務説明等を含めた、個別面接、グループ面接等が繰り返し行われます。

※令和5年度(2023年度)の官庁訪問では、第1クールについては、オンライン面接を希望する受験者に対し、各省庁は必ずオンラインで対応することになっています(各省庁の判断により、対面型の面接は実施せず、オンライン面接のみで実施されることもあります。)。

各省庁の優先順位はつけておく必要がある

官庁訪問は第1クールで3日に分けて各省庁に訪問できますが、1日目には一番希望する省庁を選んでおくことがおすすめです。

理由としては、志望度合いを担当者に伝えることができるからです。

また、優先順位をつけておかなければ、第2クール目で官庁訪問の日程がかぶってしまう可能性もあり、どちらかを選択する必要があります。

官庁訪問の日程がかぶる場合

第2クールで官庁訪問の日程が被る場合、日程をずらしてもらうことは原則難しいと考えておきましょう。

また、受験者が日程の変更を申し出ることは、その官庁が第一志望ではないと伝えていることと同じなため、印象は良くありません。

そのため、日程がかぶってしまった場合は、どちらかを選択する必要があります。(急病などになった場合などは、連絡を行いましょう。)

官庁訪問では、秘書課面接と原課面接等が行われる

官庁訪問では受験者に対して「入口面接」から始まり「秘書課面接」、「原課面接」、「集団討論・グループ面接(グルディス)」「出口面接」が行われます。

以下は官庁訪問で代表的な、「秘書課面接」と「原課面接」について詳しく説明します。

秘書課面接
(人事)
人事担当から受験者の志望動機や(官庁訪問する)省庁で行いたいことなどを聞かれる面接
また、人事担当から原課面接等の感想や自分評価を伝えられる面接
原課面接
(職員)
実際に(官庁訪問する)省庁で働いている職員から30分~1時間程度の話をする面接形式
※職員からの質問は少なく、自分から気になる点を逆質問していきます。

官庁訪問の面接では、原課面接、秘書課面接を繰り返し、その受験者の評価が出るまで面接が繰り返されます。

そのため、官庁訪問ではこの面接対策や面接での事前準備が必須です。

官庁訪問の1日の流れ(例)

以下は、「国家総合職(院卒者・大卒程度):春試験」の官庁訪問の1日の流れ(例)です。

8:30~ 受付
9:00~ 原課面接①
・政策・制度等担当職員による面接、業務説明など
待機
原課面接②
12:00~ 昼休憩・待機
13:30~ 原課面接③
待機
16:00~ 採用担当による面接①(秘書課面接)
待機
採用担当による面接②(秘書課面接)
18:00~ 終了
(当日又は後日、次のクールの訪問等に関する連絡を受ける)

受験者は待合室等で待機することも非常に多く、他の受験者と一緒に待機している場合もあります。

官庁訪問の倍率

官庁訪問の倍率に関しては、各省庁によって差がありますが、国家総合職であれば2.5倍~4.0倍の厳しい省庁もあると言われています

しかし、仮に競争倍率が分かった場合でも、倍率が低い省庁は内定をもらいやすいかと言われると、そうでもありません。

官庁訪問では10数回の面接が複数日に渡り行われ、適性や人柄・能力が判断されるためです。

そのため、競争倍率を気にすることなく、希望する省庁に粘り強く参加していくことがおすすめです。

官庁訪問の体験記・ブログをまとめ

官庁訪問を行った自身の体験記をまとめているブログ等が多く存在します。

以下では、参考になりそうな官庁訪問の体験記・ブログをまとめていますので、気になる方は参考にしてみてください。

まとめ

官庁訪問は、国家公務員を目指す学生・求職者にとって重要なステップであり、国家総合職、国家一般職の試験(院卒者・大卒程度試験)の合格者だけがこの機会を得ることができます。

また、官庁訪問は希望する官庁でのキャリアを探求し、自己PRの機会を提供するとともに、組織の文化や業務内容を深く理解するためのものです。

官庁訪問は4つのクールに分かれており、日程が重なる場合の対処法、各種面接の種類、1日の流れ、そして官庁訪問の競争倍率についても理解することが重要です。

本記事が、国家公務員を目指す皆さんの官庁訪問に向けた準備に役立ち、夢のキャリア実現への一助となることを願っています。

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ABOUTこの記事をかいた人

キャリアコンサルタント(国家資格) 真下 彩花

新卒で東証スタンダードに上場している会社に入社し、個人事業主・税理士などの経理・税務サポートを担当後、半導体・電子部品等の最大手(東証プライム上場)に転職し、営業支援に従事する。その後、ベンチャー企業での経理・採用経験を経て、2019年から株式会社pekoにて、公務員試験・求人情報「公務in」の運営、キャリアアドバイザーとして多くの転職者のサポートを担当中。

参考文献等

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