ココがポイント
技術系採用が再び定員割れ:2025年度も476人不足し、2年連続で深刻化
受験者数が大幅減少:前年度比2割減、民間との待遇・キャリア競争が背景
人事院が新施策検討:インターン制度や技術系特化試験の導入を視野に入れる

2025年度の国家公務員一般職(大卒程度)試験で、技術系区分の合格者数は1,206人で、採用予定の1,682人に対し476人も不足し、2年連続の定員割れとなりました。前年度の不足数は約60人だったため、状況は急激に更に深刻化しています。この現象は、技術立国を謳う日本にとって重大な警鐘と言えるでしょう。背景には、民間企業との待遇競争、受験志望者の減少、そして採用制度の変化など複数の要因が絡み合っています。

不足の状況を分野ごとに整理すると、以下の通りになります。

分野 合格者数 採用予定数 充足率
機械 75 156 48%
土木 231 443 52%
建築 35 81 43%
デジタル・電気・電子 140 262 53%
農学 271 209 130%
林学 139 125 111%

出典:人事院「2025年度 一般職試験(大卒程度試験) 区分別実施結果・合格者の状況」(報道発表資料 PDF)

このデータは人事院の報道発表資料に基づくもので、技術系全体の合格者や採用予定数も併記されており、今回の記事における数値はすべてそちらの表から引用しています(出典:人事院 区分別実施結果・合格者状況 PDF)。また、朝日新聞など複数の報道機関でも一致して報じられています。

受験者数にも注目すべき動きがあります。技術系の受験者は1,919人と、前年から約2割減少しました。若手の理系人材が減少していることは明らかになっており、加えて待遇面で民間企業が優位に立ち始めている影響も大きいと見られます。2025年度春入社の企業では、全学歴で初任給を引き上げた例が8割以上に上り、大学卒の初任給は24万~25万円台が多数報告されています(出典:労政時報ほか)。

このような背景を踏まえると、国家公務員の技術系採用に関する構造的な課題が浮かび上がります。教養区分の新設により若年層の受験機会が広がった一方、選択肢が多様化したことで、志望者の一部が専門的な技術系から教養区分へ流れてしまっている可能性も否定できません。短期的な対策ではなく、魅力的な待遇や広報、インターン制度などを通じた長期的な施策が不可欠です。

影響は社会インフラにも直結します。機械・土木・建築・電気電子などの技術職は、道路整備、水道、公共施設の計画・管理・保守やデジタル行政、さらには防災・防衛に関わる業務など、国家の基盤を支える重要な役割を担います。ここで人材確保に失敗すれば、社会の安全性やサービス品質の維持にも深刻な影響が及ぶ恐れがあります。

編集部からのコメント

今回の2年連続にわたる技術系の定員割れは、単なる採用の揺れではなく、日本の行政と技術力を巡る持続可能性に関わる重要な“分岐点”と位置づけられます。

近年では民間でも技術系人材の引き抜きや待遇改善が積極的で、公務員の安定性に加え、報酬、キャリアの自由度、社会貢献という複層的魅力を提供していく必要が高まっています。また、多様性の観点で女性技術者が増加している点は歓迎すべき進展ですが、それだけでは不足を補えない現実も見逃せません。施策の実効性を高めるためにも、「公務の価値」や「やりがいある環境」をどのように若手に届けていくかが、今後の命題となるでしょう。

参照:朝日新聞デジタル

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ABOUTこの記事をかいた人

キャリアコンサルタント(国家資格) 真下 彩花

新卒で東証スタンダードに上場している会社に入社し、個人事業主・税理士などの経理・税務サポートを担当後、半導体・電子部品等の最大手(東証プライム上場)に転職し、営業支援に従事する。その後、ベンチャー企業での経理・採用経験を経て、2019年から株式会社pekoにて、公務員試験・求人情報「公務in」の運営、キャリアアドバイザーとして多くの転職者のサポートを担当中。

参考文献等

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